2020年に公開された映画「THE FATHER(邦題:ファーザー)」をNetflixで観ました。アンソニー ホプキンス主演でアカデミー主演男優賞を受賞したこともあって、気になっていた映画の感想です。
認知症の人の世界観
物語は、認知症だけど本人はいたってまともなつもりのアンソニーホプキンス(役名もアンソニー)の視点で進んでいきます。っというか進んでいるのかどうかもわからない。
時系列も登場人物も、娘の容姿や話したことが繰り返されたり否定されたり。どれが本当なのかわからない状況で、あれ?ここはどこ?この人誰??とアンソニーと同じく観ている自分も困惑。
娘の顔も時々変わって、誰なのか? 一人なのか、再婚したのか、一緒に暮らしているのかいないのか。自分をおいてパリに行くのかいかないのか、同居人の男性からひどいことを言われるのですがそんな人はいなかったり…別の同居人の人が現れたり。一体どの話が本当なのか?何か思い違いをしているのか?? 混乱しながらも「ああそうだったね」とか言って話を合わせながら過ごします。
朝だと思っていたら夕ご飯の時間でいつもまにか娘が帰宅していたり、自宅だと思ったら妄想上の娘夫婦の家だったり施設だったり、同じ会話を何度もしたり(リアルに体験していると思ったり)。。知らない間に施設に入居後何か月もたっていて、実は毎週末に娘が訪ねてきていて、公園を散歩しているんですよ。と介護人に言われても、その覚えもなく。。ここは自宅ではないのか?? 娘が泣いていたような気がする、娘の夫と称する知らない人に「わざとやってるのか?迷惑をかけて」云々叱られる。
自分はユーモアたっぷりに人と話しているつもり、介護の人にあいさつで「実はタップダンサーだった」といっておどけて踊って見せたり…。 でもその介護の人も次に現れた時は顔が違う。??? いつ誰と何の話をしたんだっけ・・・?
ひたすらアンソニーの視点で淡々とストーリーが(困惑しつつ)行きつ戻りつ流れていくので、重々しくはないけれど、見終わったあと、ああ、いずれ自分もこうなる可能性があるんだ、という気持ち。
すべての葉を失っていくようだ
劇中で、ずっと混乱していた(本人はまともだとおもっていたのに何やらおかしなことにうすうす気づく)アンソニーがふと我に返ってつぶやいたセリフです。
そう、当たり前ですが本人はまともな感覚のつもりで、ただただ周りのことが理解しきれなくなっていく。もう最後は迷子のように母を呼んで泣くんです。せつない。
泣いているアンソニーをなだめる介護の人。窓の外に映る、まだ青々と葉をつけた木々が風にそよいでいる。なんの語りもないシーンですが、今は葉をつけている木々=私たちも、時間がくれば風に、雨に、季節に葉を落としていくのです。記憶のカケラを落としていくのです。
~完~
って、これが、この人生の最後に不安・不穏な夢を見る日々が続くということをつきつけてきます。
感想:自我が前面にでる
年をとるにつれ、理性というブレーキがききにくくなってきて、普段は隠している自我が前面におしだされるといいます。感情のコントロールができない。認知症がはいってくると、悪口を言われている、何か盗まれた、時には暴力をふるわれていると思ってしまうとか。いたって本人は本気・正気のつもりなんだなと今回の疑似体験で腹落ちします。周りはつらいですけれど。
映画の中でアンソニーは自分の「家」と「時計」と「娘」に固執します。 なので自分の家じゃない、と妄想上の人に言われたり、時計がなくなったり(置き忘れているだけ)するとものすごく不安になって怒りっぽくなったりします。暴言で何人も介護の人が変わった末、施設に入ります。どのタイミングで施設に入ったのか観客にもアンソニーにもわかりませんが、最後に登場する医師がかなり早い段階で妄想上に「誰?」な感じで現れることからして、割と早い段階で実は施設にいたのだと思われます。
私が固執するものはなんだろう。わりと発散しながら生きていますが、そのトゲに磨きがかかるとか(!) 何か叫んでしまうのだろうか。「もっと…したかった!!」の類はないけれど、忘れ物(体操服)をして取りに帰る夢を時折見るので、届け物しなくちゃ、みたいな感じかな。いやいや、そんなぬるい感じじゃないな。
夫はおおらかだけれど、実は忍耐の人。いつか私のことがわからなくなったら、何を言われるのか。。着替えとか全力で阻止されそうです。それに身体が大きいので暴れられたらどうにもできません。
…っとまあ、先のことをあれこれ考えて憂いてもしょうがない、心穏やかに、我慢せず日々楽しんでおいた方がよさそうです。
アンソニーホプキンス出演の作品・おすすめ
100%私の好みの「紳士なアンソニー」
- 羊たちの沈黙 :言わずと知れたレクター博士。
- ザ ライト :エクソシストの話。心理的な描写多。
- ジョーブラックをよろしく:陰陽どっちもまぶしすぎるブラピといぶし銀のホプキンス。
あれ、あまりなかった。。羊たち、、も表向きは紳士。怖すぎて、「ハンニバル」は観ていません。
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