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「その本は」という本は

舞台・芸術鑑賞

インスタで流れてきた本の紹介をみてAmazonぽちっとな。今や芥川賞作家の又吉さんと人気の絵本作家のヨシタケシンスケさんの共著。

その本は

本のタイトルが「その本は」。のっけからなにかが始まりそうな。Amazonで発注して翌日には届いた一冊。細部まで装丁が美しく、Kindleでの販売がなかったのもうなづけた一冊。手に取って1ページずつ何度も読める、そんな本。


本の好きな王様がいました。王様はもう年寄りで、目がほとんど見えません。王様は二人の男を城に呼び、言いました。 「わしは本が好きだ。今までたくさんの本を読んだ。たいていの本は読んだつもりだ。しかし、目が悪くなり、もう本を読むことができない。でもわしは、本が好きだ。だから、本の話を聞きたいのだ。 お前たち、世界中をまわって『めずらしい本』について知っている者を探し出し、その者から、その本についての話を聞いてきてくれ。 そしてその本の話をわしに教えてほしいのだ」 旅に出たふたりの男は、たくさんの本の話を持ち帰り、王様のために夜ごと語り出した―。 

夜ごと、1日おきに又吉さん作の本の話とヨシタケシンスケさんの本の話が交互に王様に報告されるテイで進んでいきます。

これはひとつ、自分がその王様になったつもりで1日ずつ、あるいは少しずつ読んで(聞いて)いくことに。楽しい。

意外にもファンタジーな又吉さん

又吉さんが紡ぎだす本の話は奇想天外。意外にも(ごめん)ファンタジー。時にダークファンタジーあり。1つ1つがふわふわ・きらりとした世界感。

それ、本?とおもうようなものもあるし、1つの物語としてもっと聞きたい、知りたいお話もありました。

想像・創造の幅広さとひきこまれる文章。読むごとに鮮やかに目の前に絵として広がる世界観。すばらしい。

1つ1つの「その本」の中身をもっと知りたい。1つ1つの本のその先を妄想しながら読みすすめます。

意外にもスパイシーなヨシタケさん

ぽってりした絵がかわいらしいヨシタケさんのイラスト。目にしたことがある方も多いと思います。そして意外にも語られる「その本」の内容は時に風刺がきいてスパイシー。かわいらしい絵のその先にちょっとこわいものも。1つ1つ想像しながら読み進めます。

楽しみながら毎夜聞いている王様

本や物語に触れる時、自分を全く切り離す時もあるし、だれかに自分を投影するときもありますね。

今回は後者。少々、いや多大に僭越ではありますが、

たくさんの本を読んできて、目が悪くなり、世界中の珍しい本の話をききたい王様の立場で

1夜2夜と語られる「その本」たちの話に耳を傾ける、つもりで読む。

最後にオチもあって、これは何度も読み返しては1つ1つの話を自分で味わい続きを妄想しながら、時に笑ったり驚いたりしながら何度も読み返す、本への愛情あふれた「その本は」は。

 

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